ある患者さんの訴えです。
ある日突然、右の胸から背中、腕にかけて、身体の片側だけに筋肉痛のような、神経痛のような違和感が出てきました。皮膚には何もできていないのに、服が触れただけでも擦れるような、しみるような、チクチクするような不快な症状です。
時々痛痒いこともあり、虫に刺されたのかと思ってよく見ても、それらしき跡もなく、筋肉痛のような重い痛みも感じて、湿布を貼ってみましたが、あまり良くなった感じはありません。
4~5日位違和感が続いた後に、痛みがあった部位に赤い小さな水ぶくれが重なったようにたくさん出てきました。 湿布にかぶれたのかと思い、慌てて皮膚科に行ってみると『帯状疱疹』と診断されました。
寒暖の差が大きい時期、抵抗力が落ちてくると、帯状疱疹の患者さんが増えます。皮膚科の疾患の中では痛い病気の代表です。
帯状疱疹は、水ぼうそうになったことがある人に起こります。Varicella Zoster Virus(水痘帯状疱疹ウィルス)が原因です。身体の片側だけに集中して水疱(水ぶくれ)を作り、赤くなります。典型例では、身体の片側に文字通り帯を巻いたように集中して皮疹が出てきます。
子供の時に水ぼうそうになった後に、ウィルスは死滅せずに知覚神経の神経節という、ちょっと膨らんだ所にじっと潜んでいます。弱いウィルスなのですが、宿主であるヒトが、加齢や体調が落ちたりなどで、免疫力や抵抗力が低下すると、弱いウィルスも段々力をつけてきて、知覚神経を伝わって皮膚表面近くまで移動します。
2度目の水ぼうそうが局所に出現した感じです。知覚神経は、脊髄の後側から左右に一本ずつ出ていて、ウィルスが潜んでいる神経の部位によって、帯状疱疹ができる部位が決まります。身体や腕、脚や顔、頭にもできます。
帯状疱疹のウィルスは、知覚神経で活動するため、神経痛のような筋肉痛のような痛みから始まることが多いのですが、実は知覚異常を起こしていますから、痛いだけではなく異常に痒かったり、蟻が這うような感覚が起こることもあります。
帯状疱疹は通常、痛みなどの異常感覚が1週間程続いてからぶつぶつと皮疹が現れ、皮疹が出てからかさぶたになって乾く迄に、平均して19日かかると言われています。
冷えると痛みが強くなったり、後々まで痛みが残ったりしますから、経過中は冷やさないことです。痛い時は温めると痛みが緩和します。お風呂で温めてください。帯状疱疹は身体が弱っていることの現れです。栄養を摂ってゆっくり過ごすことが必要です。なるべく早い内に抗ウィルス剤を使用すれば完治します。
もしかして帯状疱疹かなと思ったら、早めに皮膚科を受診してくださいね。
私のクリニック目白
院長 平田 雅子